1. 「行政書士の報酬は高い」と感じられる理由はどこにあるのか(私見)
行政書士に手続を依頼しようとした際、報酬額を見て「思っていたより高い」と感じた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
書類を作成し、役所に提出するという行為だけを見ると、そのように感じられるのも無理はありません。
しかし、私は行政書士の報酬は、単なる作業代というよりも、書類作成や申請行為に付随する責任を引き受ける対価を含むものだと考えています。本稿では、その点について、あくまで一行政書士としての私見を述べてみたいと思います。
2. 本人申請という選択肢と、その裏側にある責任の所在
多くの行政手続は、本人が自ら申請することも可能です。
本人申請の最大の利点は、費用を抑えられる点にあります。
一方で、書類の記載内容や添付書類の不足、前提条件の見落としなどが原因で申請が受理されなかった場合、その結果を引き受けるのは申請者本人です。
本人申請とは、「費用を抑える選択」であると同時に、「手続の結果について自ら責任を負う選択」であると言えます。
この点は、実際に申請を行って初めて意識されることも少なくありません。
3. 行政書士が関与する場合に引き受けている責任とは何か
行政書士が業務として書類作成や申請を行う場合、単に依頼者の言われたとおりに書類を書くわけではありません。
法令や運用を踏まえ、申請が可能かどうかを確認し、必要な資料を精査し、記載内容の整合性を整える責任があります。
また、申請後に問題が生じた場合、「依頼者がそう言ったから」「書類を作成しただけだから」という説明では足りません。
行政書士が作成した書面である以上、その内容について、第三者から問われた場合でも説明できるだけの説明責任と判断責任を負う立場にあります。
ここに、本人申請との決定的な違いがあると考えています。
4. 行政書士の報酬に含まれる「責任料」という考え方
行政書士の報酬を、作業時間や書類の枚数だけで測ることはできません。
業務の本質は、「どれだけ時間をかけたか」ではなく、「どの範囲の責任を引き受けているか」にあります。
私は、行政書士の報酬には、こうした見えにくい責任の引き受け、言い換えれば責任料、あるいは保険料のような性質を持つ部分が含まれていると考えています。
そのため、単純な手間賃としての値引きには限界があります。
もっとも、業務の内容や責任の範囲が限定される場合には、報酬が異なることもあります。
重要なのは、金額の多寡ではなく、その報酬にどこまでの責任が含まれているのかを正しく理解することだと思います。
5. 結論 ― 比較すべきは「金額」ではなく「誰が責任を負うのか」
もし、書面を作成・申請するだけで、その結果について一切責任を負わなくてよいのであれば、大幅な値引きも可能かもしれません。
しかし、それでは専門家として関与する意味が薄れてしまいます。
本人申請を選ぶか、行政書士に依頼するかは、申請者ご本人の自由な選択です。
ただ、その判断にあたっては、「安いか高いか」だけでなく、「誰がその手続の責任を負うのか」という視点を持っていただきたいと思います。
行政書士の報酬とは、書類作成行為そのものではなく、その前後に伴う判断や説明、そして責任を引き受けることへの対価である――。
本稿が、その点を考える一助になれば幸いです。なお、以上は一行政書士としての私見です。
