相続手続きについて、「まずは自分でやってみよう」と考える方は少なくありません。
インターネットで調べれば情報は手に入りますし、費用を抑えたいというお気持ちも自然なことです。
しかし、実務の現場では、途中で相続手続きが止まってしまう方が非常に多いのが現実です。
そして最終的に、「最初から専門家に頼めばよかった」と相談に来られるケースを、私は何度も見てきました。
では、なぜ相続手続きは途中で行き詰まりやすいのでしょうか。
1. 平日に役所・金融機関へ行かなければならない
相続手続きで最初につまずきやすいのが、平日に動かなければならないという点です。
金融機関は原則として平日のみ営業しており、窓口は15時で閉まります。
さらに近年では、11時30分から12時30分まで昼休みとして、窓口対応を行っていない金融機関も見られます。
限られた時間内での対応になるため、仕事を休んで行ったにもかかわらず、十分な手続きが進まなかったというケースも少なくありません。
市役所の窓口も混雑していることが多く、想定以上に待ち時間がかかることがあります。
また、相続では遠方の戸籍が必要になることもありますが、どこに、どのように請求すればよいのか分からず、そこで手が止まってしまう方もいます。
郵送請求ができるとはいえ、記載内容や添付書類に不備があると、再請求となり、さらに時間がかかります。
加えて、金融機関の相続手続きは、金融機関ごとに必要書類や進め方が異なる場合があり、その違いに戸惑う方も多いのが実情です。
2. 行く場所が一か所では終わらない
相続手続きは、市役所だけ、銀行だけで完結するものではありません。
戸籍関係、預貯金、不動産と、複数の窓口を回ることが前提になります。
特に預貯金と不動産の両方がある場合、それぞれ手続きの進め方が異なり、全体像が見えにくくなります。
3. 知識を調べるところから始めるため、時間がかかる
相続手続きは、単なる事務作業ではありません。
どの戸籍が必要なのか、どこまで遡るのか、どの書類が不要なのか――
判断そのものに一定の知識が必要になります。
慣れていない方が一から調べて進めると、どうしても時間がかかり、
「自分の時給で考えたら、専門家に頼んだ方が安いのではないか」と感じる方も少なくありません。
4. 想定外の手間が突然現れる
相続では、事前には見えていなかった問題が後から出てくることがあります。
- 銀行口座が複数あった
- 不動産が複数の市町村に分散していた
- 相続人に未成年者がいて、特別代理人の選任が必要になった
- 書面作成に不慣れで、法定相続情報一覧図が作れない
- 遺産分割協議書の書き方が分からない
こうした事情が一つでも加わると、手続きの難易度は一気に上がります。
5. 生成AIの情報は「正しさを判断できなければ危険」
最近では、生成AIを使って相続手続きを調べる方も増えています。
しかし、生成AIは誤った情報をもっともらしく提示することがあります。
曜日や日付といった基本的な点ですら間違うことがあり、その誤りに気づけなければ、手続きのやり直しや遅延につながります。
情報を「使ってよいかどうか」を判断する力がないまま進めるのは、実はリスクが高いのです。
最初から専門家に任せるという選択
相続手続きを途中で投げ出してしまうと、時間だけでなく精神的な負担も大きくなります。
最初から専門家に依頼することで、無駄な往復や調べ物を減らし、確実に手続きを前へ進めることができます。
「自分でできるかどうか」ではなく、
「自分でやることが本当に合理的かどうか」。
そう考えてみると、専門家に依頼するという選択の意味が見えてくるのではないでしょうか。
