コラム

27.成年後見制度のメリットとデメリット(2025年12月)

1. 導入

高齢化が進むなかで、「判断能力が不十分になったときに財産や生活をどう守るか」というご相談をいただくことが増えています。
ここで重要なのは、成年後見人を付けることは義務ではないという点です。判断能力がすでに低下している状態であっても、「成年後見人を付けるか、付けないか」は家族が選択できるのです。

つまり、問題は「判断能力が無い現状において、このまま成年後見人なしで良いのか、それとも成年後見人を付けるべきか」という選択にあります。
今回は、その判断の参考となるよう、成年後見制度のメリットとデメリットを依頼者目線で整理してみます。

2. 成年後見制度のメリット

  • 不当な契約を防げる
    悪質な訪問販売や高額な契約を後見人が取り消せるため、大切な財産を守ることができます。
  • 財産管理の確実性
    預貯金の入出金や生活費の支払いを後見人が代理します。本人や家族が自由に財産を動かせなくなる一方、資産の管理は透明で不正利用の心配が減ります。
  • 不動産の売却や相続放棄に対応できる
    判断能力を失った状態では、自宅の売却や相続放棄などの法律行為は本人や家族だけではできません。後見人がいれば、裁判所の監督下でこれらを進めることができます。
  • 相続放棄の熟慮期間にも対応
    相続放棄は原則3か月以内に行う必要がありますが、判断能力を欠く場合は「熟慮期間の伸長」を家庭裁判所に申立てることで、後見人選任後から新たに90日の期間が始まります。この仕組みを知っていれば、相続放棄も確実に行えます。
  • 家庭裁判所の監督で安心
    後見人は定期的に財産目録や収支報告を裁判所に提出する義務があり、透明性が担保されます。

3. 成年後見制度のデメリット

  • 申立てから選任まで時間がかかる
    家庭裁判所に申立てをしてから後見人が選任されるまで、通常3か月から半年程度を要します。急な資金需要や相続対応にはすぐに動けない点が課題です。
  • 費用の負担
    申立てには診断書費用(1~2万円)、印紙代・切手代がかかり、さらに専門職後見人が就任すると月2~5万円程度の報酬が財産から支払われます。
  • 日常の自由が制限される
    後見人が就任すると、本人や家族は財産を自由に処分できなくなります。不動産の売却や高額の出費には裁判所の許可が必要です。
  • 後見人の役割は限定的
    後見人は介護者ではありません。病院の付き添いや日常の世話、話し相手になることは制度上の役割ではなく、実際には年に1回しか会わないという事務的な対応にとどまることもあります。もちろん、人柄によって親身に寄り添う後見人もいますが、その違いは大きいのが実情です。
  • 「早く付けると不自由、付けないと急に困る」ジレンマ
    後見人を早く付ければ日常の財産管理に制約がかかり、生活に不便を感じることがあります。逆に付けないままでは、不動産の売却や相続放棄などの法律行為が滞り、重大な不利益を被る可能性があります。この二面性こそ、成年後見制度を利用するか否かを考える上での最大のポイントです。

4. まとめ

成年後見制度は、判断能力を失った本人の財産や生活を守る強力な制度です。しかし、それは義務ではなく、「付けるか否かを判断する選択肢」に過ぎません。

後見人を付けることによる安心と制約、付けないことによる自由とリスク。このジレンマを理解したうえで、介護や法律の専門家と相談しながら、自分や家族にとって最適な方法を選ぶことが大切です。

「もし判断能力が低下したらどうしよう」と不安を感じたときには、早めに専門家に相談し、一緒に備えを考えることをお勧めします。