コラム

26.行政書士が裁判所でできること・できないこと(2025年11月)

1. 導入

「成年後見の申立ては行政書士に頼めるのですか?」というご質問をいただくことがあります。
実際のところ、家庭裁判所に提出する申立て書類には、行政書士が関われる部分と関われない部分が存在します。
行政書士は官公署に提出する書類の作成を業務としていますが、「裁判所」については、代理できる範囲が法律で制限されているからです。
そこで今回は、行政書士が裁判所でできること・できないことを依頼者の目線から整理してみたいと思います。

2. 行政書士ができること(非争訟事件の補助)

行政書士は、裁判所に提出する書類の中でも、いわゆる「非争訟事件」と呼ばれる分野については、申立書の作成【補助】を行うことができます。
たとえば、次のような申立てが典型です。

  • 成年後見開始の審判申立
  • 特別代理人選任申立
  • 不在者財産管理人選任申立
  • 相続放棄の申述
  • 子の氏変更の許可申立

これらは、当事者同士の争いがなく、裁判所が法律関係を整えるために行う手続です。
行政書士は代理人として申立てをすることはできませんが、申立書の作成【補助】や添付書類の整理を通じて、依頼者が円滑に手続を進められるよう支援できます。

また、戸籍や財産資料の収集方法を案内したり、財産目録を作成したりといった準備作業も重要なサポートです。
さらに、依頼者が裁判所に出向く際には、【付き添い】として手続の流れを見守ることもできます。
もちろん、裁判所での説明は本人が行いますが、横で支える専門家がいるだけで安心感が生まれます。

3. 行政書士ができないこと(争訟事件や代理行為)

一方で、行政書士には明確に「できないこと」もあります。

まず、行政書士は代理人として裁判所に申立てを行うことはできません。
書類を整えることはできても、実際に提出し、内容について説明するのは依頼者本人の役割です。

また、紛争を前提とする申立て――たとえば支払督促、調停申立、訴訟提起など――は、弁護士や司法書士の独占業務です。
当事者間のトラブル解決を目的とする手続は、行政書士が扱うことはできません。

さらに、戸籍や住民票を職務請求で取得することも認められていません。
必要書類の収集は、原則として本人や親族に行っていただくことになります。

4. 弁護士・司法書士・行政書士の違い(依頼者目線で整理)

ここで、多くの方が迷われる「弁護士・司法書士・行政書士の違い」を整理しておきましょう。

  • 弁護士 :紛争案件を含めて全面的に対応可能。調停や訴訟を任せられる。
  • 司法書士:成年後見など非争訟事件で代理人になれる。さらに簡易裁判所では140万円以下の訴訟代理も可能。
  • 行政書士:申立書の作成【補助】まで。代理人にはなれないが、書類づくりと準備支援で依頼者を支える。

依頼者目線で言えば、

  • 紛争があるなら弁護士
  • 裁判所での代理を希望するなら司法書士
  • 書類作成や準備のサポートを受けたいなら行政書士

という整理になります。 

5. まとめ

行政書士は裁判所に代理人として立つことはできません。
しかし、申立書の作成や資料の整理を【補助】することで、依頼者がスムーズに手続きを進められるように支えることができます。

「裁判所に提出する書類」と聞くと敷居が高く感じられる方も多いかもしれませんが、行政書士が下支えすることで、安心して臨むことができます。

次回(12月)のコラムでは、この流れを受けて、成年後見制度のメリットとデメリットを具体的に取り上げ、より詳しく解説していきます。

区 分 行政書士ができること 行政書士ができないこと
裁判所提出書類 成年後見・特別代理人・不在者財産管理人・相続放棄などの申立書を【補助】 裁判所への代理申立、本人に代わっての説明・提出
添付書類 必要書類の案内、財産目録の作成を【補助】 職務請求による戸籍・住民票の取得
依頼者対応 制度や流れを説明、裁判所へ【付き添い】(説明は本人) 裁判所とのやりとりを本人の代わりに行うこと
紛争案件 ── 支払督促・調停・訴訟など、紛争解決を目的とする手続