相続が発生すると、相続人全員で「遺産をどう分けるか」を決める手続き――
それが「遺産分割協議」です。
この協議は、相続人が複数いる場合、全員の合意が必要で、実印の押印や印鑑証明書の取得も求められます。
特に、相続人が遠方に住んでいる、連絡が取りづらい、関係が希薄などの場合は、手続きが長期化しがちです。
こうしたトラブルや負担を避けるために、今あらためて注目されているのが遺言書です。
「遺言書なんて、まだ早い」「健康なうちは必要ない」と思われがちですが、
人はいつ亡くなるか分からないもの。だからこそ、元気なうちに準備しておくことが大切なのです。
◆ 遺産分割協議を省略できる安心感
遺言書があれば、原則として遺産分割協議は不要になります。
つまり、遺言書の内容通りに相続手続きを進めることができるのです。
たとえば、「長男に自宅を、長女には預金を」といった具体的な記載があることで、
相続人全員が一同に会して話し合う必要がなくなり、手続きの負担を大きく減らすことができます。
もちろん、相続人全員の合意があれば、遺言書と異なる分割を行うことも可能ですが、
合意が得られない可能性がある場合や、話し合いが難しい関係性であれば、
遺言書があること自体が大きな「道しるべ」になります。
◆ 相続人に後見人がいるときもスムーズに
相続人の中に、精神障害や知的障害などの理由で成年後見制度を利用している方がいる場合、
遺産分割協議には家庭裁判所の監督や後見人の同意が必要となります。
これは、本人の利益を守るための制度ですが、協議が複雑化し、手続きが長期化する原因にもなります。
しかし、遺言書があればそもそも協議は不要。
その結果、後見人の同意や裁判所の判断を待つ必要がなくなり、スムーズな手続きが可能になります。
◆ 想いを伝える手段としての「付言事項」
遺言書には、「誰に」「何を」相続させるかだけでなく、
遺言者の想いを伝える「付言事項(ふげんじこう)」という欄を設けることができます。
たとえば、
「長年介護をしてくれた○○に感謝しています」
「財産の分け方に理由があります。納得して受け取ってください」
「この遺言が、家族の絆をつなぐものであってほしい」
こうした文章は、法的拘束力こそありませんが、相続人にとって強いメッセージとなり、争いの抑止力にもなります。
遺言書を通じて、亡くなった方の声が家族に届く――それが遺言の持つ、本当の力かもしれません。
◆ 健康な今だからこそ、準備できる
遺言書の作成は、本人の判断能力がしっかりしているときにしかできません。
認知症の診断を受けたあとでは、意思能力がないと判断されて無効になるおそれもあります。
「まだ大丈夫」と思っていても、突然の病気や事故で判断能力を失ってしまうことも。
だからこそ、健康な今こそが「準備のタイミング」です。
◆ まとめ
遺言書は、
- 相続手続きを簡素化し
- 相続人の負担を軽減し
- 遺言者の意思を明確に伝える
ための、大切な備えです。
相続は、いつか必ずやってきます。
だからこそ、今できる準備が、未来の家族を守ることにつながります。
遺言書の作成について不安なことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
行政書士として、わかりやすく丁寧にサポートいたします。
