コラム
17.相続土地国庫帰属制度の活用【私見】(2025年2月)
- 問題提起
最近、ネットの記事で相続土地国庫帰属制度(以下、「本制度」という)が利用しにくいという記事を読みました。当事務所では、事務所開設当初から本制度の利用をホームページなどでも推進してまいりました。ですが、私が読んだ記事にあったように、申請者が管理料を支払うことや残置物の存在、他人の権利の目的物となっている(例えば、水道管が埋設されている)などの理由により申請ができないことが指摘されています。私が読んだ記事では、本制度のデメリットばかり記載されていましたので、以前のコラムと重複しますが、本制度のメリットを再度掲載します。
- 本制度のメリット
- 本制度では、申請土地の測量を必ずしも必要としない
本来、土地を他人に譲渡する場合、譲渡人は測量をして、境界を確定する必要がある。
しかし、本制度では、隣地所有者が承諾または、具体的に根拠を示して反論しない限りは、申請土地の境界が認められるため、必ずしも高額な測量を必要としない。
- 登記の手続きが不要
本来、土地を譲渡する場合、譲渡する土地が現所有者に相続登記されていない場合や住所移転してその旨を登記していない場合は、現状に合わせた登記をしない限り、譲受人に所有権移転登記はできない。よって、譲渡人は、現状に合わせた登記をする必要がある。
しかし、本制度では、申請人は現状に合わせた登記をする必要がなく、申請人から国への所有権移転登記も嘱託でなされて、申請人は登記費用を必要としない。
- 農地を移転する際の手続きが不要
通常農地を移転する際には、農地法3条許可又は農地法5条許可が必要になる。
しかし、本制度では農地を国庫に帰属する際には、この農地法の許可を必要としない。
- 土地取得原因たる相続等は本制度施行以前でもよい
申請土地の取得原因は、本制度施行以降でなくとも、元号が昭和や平成などの相続でもよい。よって、現所有者が本申請の要件に合致していれば、取得は昭和でも平成でもよいことになる。
- 本制度の利用の推奨
私は、以前に不動産会社に勤務していました。その経験から、不動産が売却できない理由は大きく分けて二つあります。一つ目は、売却価格が高い。二つ目は、需要がないです。
後者の需要がない場合は、当たり前ですが、土地をいつまで売り出しても、売れなく手元に残ります。その結果、税金の支払いや管理の負担だけが、続くことになります。これらの負担も一年ごとには微々たるものかもしれませんが、長年経つと本制度の申請の費用よりも高くなるのではないかと思います。また、管理をされている方も年を取ると体力的な負担が重くなるのではないでしょうか。
長い目で考えた場合、本制度を利用した方がいい場合もあります。利用されず、売却もできない方は、一度、本制度の利用を考えてみてください。
余談ですが、国の制度は、見直されることがあります。本制度も多くの方が申請をして、いろいろな問題点が出てくれば、国も問題解決のため本制度の見直しを行い、本制度をよりよくしていくことと思います。そのためには、多くの申請が必要になるので、本制度を多くの方が利用することは、本制度をよりよくすることに役立つ社会貢献の一つであるといえると思います。