コラム

8.老後に備えて、その2(死後事務委任契約について)(2024年5月)

先月は、老後に備えて、生前の任意後見契約について記載しました。
今月は、自分が死んだ後の葬儀や墓じまい、遺品整理を行ってもらうための準備である死後事務委任契約について記載します。

  1. 死後事務委任契約の必要性
    自分がなくなった後、相続人や身寄りが誰もいない場合、自分の葬儀やお墓などのことはどうすればいいでしょうか。
    役所は死亡後の手続きをすべてしてくれるわけではありません。
    「飛ぶ鳥跡を濁さず」といいますが、生前他人に頼らず、他人に迷惑をかけずに人生を過ごしてきた方は、自分が死んだ後も他人の世話にならず、きちんと旅立ちたいと思うのではないでしょうか。
    また、人が亡くなると葬儀だけではなく、様々な手続きが必要になります。自分の死亡後の手続きを行う人を生前の健康なうちに探しておいてはいかがでしょうか。
    そこで、生前に自分の死後のことを託す死後事務委任契約が必要になります。
  2. 死後事務委任契約とは
    死後事務委任契約とは、委任者(本人)が第三者(受任者、個人・法人を含む)に対して、亡くなった後の諸手続きや葬儀・埋葬等に関する事務などについて代理権を付与して、死後の手続きを生前にお願いしておく、委任契約をいいます。
  3. 死後事務委任契約の内容
    死後事務委任契約の主な委任事項は下記のとおりです。
    • 死亡時の病院等への駆けつけ、遺体の引き取りの手配
    • 行政官庁等への諸届け
    • 葬儀、埋葬に関すること
    • 賃貸住宅、老人ホーム等施設の明渡しや遺品整理
    • 家賃、入院費などの諸費用の支払い
    • 各種契約の解除
    • 相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
    などがあります。
  4. 公正証書での作成の勧め(私見)
    死後事務委任契約は、一般的な契約書でも効果が生じます。しかし、高い信用性のある公正証書で作成することにより、死後事務の内容を実現する際の外部の方の理解が得られやすく、迅速な執行に繋がると思います。
    そこで、死後事務委任契約書は公正証書で作成することをお勧めします。
  5. 他の契約との併用(私見)
    死後事務委任契約の受任者では、死後の事務処理をすべてできるわけではありません。その代表例が、死亡届の提出です。
    死亡届の届出人は、戸籍法87条に規定のある者、または、戸籍法93条が準用する戸籍法56条により公立病院が「公設の長」として届け出ます。ちなみに私立病院の場合は、戸籍法87条第1項の家屋管理人として死亡届を提出します。
    しかし、死後事務委任契約の受任者は死亡届の届出人として法律に規定されていないので死亡届を役所に届け出ることができません。よって、受任者は、法律に規定のある者に死亡届の届出人となってもらう必要があるのです。
    戸籍法87条2項には、任意後見人及び任意後見受任者が届出人として規定してあるので、死後事務委任契約とともに、任意後見契約を結んで、死亡届の届出も任意後見契約の委任事項にしておけば死後事務委任契約ではできない死後の事務処理を補完することができます。
    このように、死後事務委任契約は単体では完全なものとはいえませんが、複数の契約等を組み合わせれば、それぞれが、補完し合って、老後の備えとなることと思います。
    一般的に、任意後見契約と死後事務委任契約のほかに、安否確認をする見守り契約、介護施設・老人ホームへの入居のための身元引受契約、病気などのため体の自由がきかなくなったときの財産管理のための財産管理契約、延命治療を拒否する尊厳死宣言、相続財産の分配を円滑に行うための遺言執行者を指定する遺言書の作成を老後の備えとして挙げることができます。
    任意後見契約及び死後事務委任契約のほかにもこのような契約等をご検討されてはいかがでしょうか。
  6. 最後に
    老後の備えとしては、前述のように様々あり、複雑です。そこで、信頼のおける行政書士などの専門家に相談して自分にあった老後の備えをしてみてはいかがでしょうか。