コラム

36.法定相続情報一覧図を活用して、相続手続をスムーズに進めましょう(2026年9月)

1. 相続手続は一か所で終わるとは限りません

相続が発生すると、預貯金の名義変更や払戻し、不動産の相続登記など、さまざまな手続が必要になります。

相続財産が複数の金融機関にある場合には、それぞれの窓口で手続を行わなければなりません。また、これらの手続では、被相続人と相続人との関係を証明するため、戸籍謄本や除籍謄本などの提出を求められることが一般的です。

一つの金融機関で手続が終われば大きな負担には感じないかもしれません。しかし、手続先が増えるほど、戸籍一式を何度も持参し、同じような説明を繰り返すことになります。戸籍の枚数が多い場合には、それだけ確認にも時間がかかります。

相続手続は、一つひとつを見るとそれほど難しいものではありません。しかし、手続先が増えるほど時間や手間が積み重なり、「思っていたより大変だった」と感じる方も少なくありません。

このような場合に役立つのが、「法定相続情報一覧図」という書類です。

2. 法定相続情報一覧図とはどのような書類でしょうか

法務局には、「法定相続情報証明制度」という制度があります。

この制度を利用すると、法務局から「法定相続情報一覧図」の写しが無料で交付されます。

法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人との関係を一覧図にまとめたものです。登記官が内容を確認し、認証文を付した一覧図の写しが交付されます。相続手続の際には、手続先の担当者が戸籍を一枚一枚確認する負担が軽減され、一覧図を見ることで相続関係を把握しやすくなります。

つまり、「法定相続情報証明制度」は仕組みの名称であり、「法定相続情報一覧図」はその制度を利用して交付される書類です。

一覧図は相続関係が一目で分かるよう整理されているため、相続登記や金融機関での手続など、さまざまな場面で利用できる場合があります。

では、この一覧図にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

3. 提出書類が整理され、手続を進めやすくなります

法定相続情報一覧図の最大のメリットは、相続手続を進めやすくすることです。

金融機関などでは、提出された戸籍を確認した上で、その写しを保管することがあります。そのため、手続先が多いほど、確認や写しの作成に時間がかかることがあります。

一方、法定相続情報一覧図を利用できる手続では、戸籍一式の代わりに一覧図を提出できる場合があります。

例えば、金融機関が一か所だけであれば、大きな違いを感じることは少ないかもしれません。しかし、三つ、四つと手続先がある場合には、その都度戸籍一式を提出し、確認を受けることになります。

法定相続情報一覧図を利用できれば、提出書類が整理されるため、窓口での確認が分かりやすくなり、利用者にとっても手続を進めやすくなることが期待できます。また、毎回大量の戸籍を持参する負担も軽減できます。さらに、一覧図の写しは必要な通数の交付を受けられるため、複数の手続先へ同時に提出し、手続を並行して進めることもできます。

もちろん、すべての手続で利用できるわけではありません。しかし、金融機関や法務局など複数の手続先がある場合には、その利便性を実感しやすい制度といえるでしょう。

4. 相続手続を円滑に進めるための選択肢の一つです

法定相続情報一覧図の作成は義務ではありません。

一方で、相続財産が複数ある場合や、金融機関などで何度も手続を行う予定がある場合には、作成しておくことで相続手続全体をスムーズに進められる可能性があります。

また、相続手続を始めてから一覧図を作成するよりも、最初に準備しておくことで、その後の手続を計画的に進めやすくなります。利用するかどうかは状況によって異なりますが、事前に制度を知っておくことは、いざという時の安心にもつながります。

相続手続は、一つひとつは難しくなくても、手続先が増えるほど時間や手間がかかります。手続を始めてから、「作成しておけばよかった」と感じる方も少なくありません。

法定相続情報一覧図は、一度の準備で、その後の相続手続をスムーズに進めるための書類です。ご自身の状況に応じて活用を検討してみてはいかがでしょうか。活用することで相続手続の負担を軽減できる場合があります。相続手続を円滑に進めるための選択肢の一つとして、ぜひ覚えておいていただければと思います。